ヴァニティ・エンジェル

流石の稲葉。
稲葉義明トーキョーN◎VAリプレイ。「ビューティフルデイ」に続く2冊目。

「神殺し The Slayers of God」と表題作「ヴァニティ・エンジェル」の二篇収録。


トーキョーN◎VAは、分類上はいわゆるサイバーパンクと呼ばれるジャンルに属することが多いが、今回はバサラやアヤカシなどに表現されるオカルトサイドの物語になっている。


サイバーパンクというジャンルにおいては、メカやテクノロジーで発展した世界を描いている「メタルヘッド」や「サイバーパンク2.0.2.0.」などが正統派だが。
TRPGにおいては、魔術などと共存している「トーキョーN◎VA」や「シャドウラン」の方が、人気が高い。
もともとサイバーパンクというジャンルが、メカやテクノロジーの世界を通じて、精神性へ追求が向くことが多い。*1
これは物語の文法として、非精神的なモノの先に精神的なモノを見つけようという構成になっているためだが。
TRPGのセッションで、そこまでを求めるのは非常に難しい。
そこで、わかりやすい精神的なものの象徴として、魔術などが登場している物が好まれるのだと思われる。


今回は、聖遺物、天使や悪魔、妖怪と言った。
テクノロジーで整然と整えられた世界からは理解されない、オカルトな者たちがアンダーグラウンドで構成している社会を舞台に物語りは描かれている。
そのため、物語のテイストとしてはいっそ「妖魔夜行」とかに近いのかとも思われる。
書き方次第では、どうとでも転ぶこの危うい作品を、稲葉義明はクールでエッジな「トーキョーN◎VA」の筆致で描ききっている。


流石、としか言いようがないよなぁ……